【マツダ ロードスターRS 新型試乗】新旧比較で実感した「アシンメトリックLSD」の真価…諸星陽一 来年2025年にはデビュー10周年を迎える現行のND型マツダ『ロードスター』が大幅改良を受けた。最大のトピックは1.5リットルエンジンを積むソフトトップ仕様のロードスターRSにアシンメトリックLSDを装備したことである。 クルマはコーナーを曲がる際に左右のタイヤが異なる軌跡を描く。内側と外側では回転半径が異なり、それをスムーズにするためにデファレンシャル機構(オープンデフと呼ばれる)という装置が装備される。スムーズに走るだけでならデファレンシャル機構は非常に優れているが、クルマをスポーティに走らせようとすると、やっかいな問題も起きる。 オープンデフではタイヤの接地が悪い(極端な場合はタイヤが浮いている状態)ほうにより多くの駆動力を伝えるという特性を持つ。つまり、オープンデフはコーナリング中に駆動力をかけづらい機構である。これを回避するために開発されたのがリミテッド・スリップ・デフ(LSD)で、デフの効果を抑制して接地しているタイヤに積極的に駆動力を伝える。 LSDにはいくつかタイプがある。初期のLSDはクラッチタイプ(機械式と呼ばれることもある)であったがメンテナンスが面倒なこともあり、競技用などを除いてあまり使われなくなってきた。NDロードスターはスーパーLSDと呼ばれるLSDを採用してきたが、今回の改良ではこれを新たにアシンメトリックLSDに変更した。詳しい機構説明は避けるが、アシンメトリックLSDは従来のスーパーLSDよりもアクセルオフ時のLSD効果を高めている。こうすることで、コーナー入り口での回頭性を向上するのが目的だ。 今回、スーパーLSDが装着された従来モデルとアシンメトリックLSDが装着された最新モデルとを比較試乗した。マツダはこうした機構を採用した際に、新旧比較での試乗体験を用意することが多い。評価する側としては非常にうれしいことで感謝である。 試乗コースを走りながら、アシンメトリックLSDの効果を試すためにコーナー進入時のアクセルオフを素早く行う。ステアリングを切り込んでいったときのノーズの入り方がアシンメトリックLSD付きモデルのほうがよく、そのあとのリヤのスタビリティも高い。アシンメトリックLSDでは減速時によりLSD効果を高く発揮できる