【ダイハツ ムーヴ 新型試乗】スライドドアになったムーヴは、軽のスタンダードになれるのか?…岩貞るみこ 今回のワンポイント確認は、「スライドドアになったムーヴは、軽自動車スタンダードになれるのか」である。 自分らしく。女性が男性評価基準で自分をつくろう必要がなくなってきた昨今だが、男性自身も、特に会社を卒業する世代はずいぶん変わった。クルマすごろくで「いつかは○○」と呪縛のようにまとわりついていた価値観はすっかり消滅し、等身大で快適にすごす心地よさを体現しているのである。 それが如実に表れているのが、軽自動車市場だ。『ムーヴ』の資料によると、今や購入者の半分以上が子離れ世代なのだという。もうクルマの大きさや価格帯で無駄に存在感を誇示する必要がなくなったのである。 ただ、この変化に合わせるようにハイト系からスーパーハイト系が売れ筋の主流になっていることは、広い車内空間に慣れた世代を受け入れるための戦略をたて、乗り心地や質感を向上させてきた軽自動車自体の努力があるだろう。 そんな軽自動車市場の軸ともいえるムーヴが、フルモデルチェンジとともにスライドドアを採用した。スライドドアは、ミニバンが大うけしている日本ならではの動きといえる。チャイルドシートのつけやすさ。元気よくドアを開けて隣のクルマにドアパンチをくらわす“キッズ怪獣”対策としてはもちろん、雨の日や荷物の多い日にも実力を発揮する。 高齢者を乗せるときも、開口部が広くほどよい高さの座面は物理的にも精神的にも苦労を解消してくれる。もちろん、一人で乗るときもなにかと使いやすい。いずれ日本は、特定のクルマ以外はすべてスライドドアになるんじゃないかというくらい受け入れられている。 ムーヴはその気配を感じ取り、いや、緻密なデータ収集と分析と、国民車としての決断により、そのポイントを押さえてきたというわけだ。 さて、そんなムーヴの運転席に座る。Aピラー窓枠のタテ部分に細いガラスがはめ込まれているおかげで、視界が明るく死角も減って周囲が見やすい。ハンドル位置は、相変わらずちょっと遠めだけれど車内空間を確保するのにタイヤを四隅に置くためスペース的にむずかしい、これを改善するためにシートに工夫がみられる。 ペダルに合わせて座面を後ろにした分、背もたれを立て気味にするのだが、座面と背もたれの低い位置が、オシリをしっとり包み込むように
