【ホンダ フリードクロスター 新型試乗】まさしく「無事之名馬」と呼ぶに相応しい…中村孝仁 「無事之名馬(ぶじこれめいば)」という格言がある。意味としては特に秀でていなくても競走馬は怪我なく走れば名馬だというもの。作家菊池寛が創り出した造語だそうである。 本来は「無事之貴人」という格言で、こちらも心配事や問題がない状態で、求めることが無くなった状態の人が貴人=悟りを開いた人、というような意味を持つそうだ。新しいホンダ『フリード』に乗って、何となくそんな思いをめぐらした。 新たに登場したフリードはこれが3世代目のモデル。前2代と比べて、そのスタイルは直線基調となって、イメージとしては小型化した『ステップワゴン』という印象が個人的には強い。 それにしてもこのモデル、3世代にわたってよく売れる。初めはコンパクトな7人乗り3列シートが売りだったように思うが、2代目に入るとそれだけではなく、今度は差別化された2列5人乗車のモデルが『スパイク』として登場(初代にも5人乗りは存在したが)。その性格分けが明確になった。 そして今回は3列7人乗車を「エア」というグレード名で呼び、2列5人乗りは「クロスター」というグレードに振り分けた。今回お借りしたのは、後者、即ちクロスターと呼ばれるモデル。3列7人乗りのエアとはフロント周りのデザインが明確に異なり、ホールアーチにも無塗装樹脂製フレアが装着され、イメージ的にもミニバンというよりもSUV的イメージをプンプンさせるモデルに仕上がっている。 そしてそのフェンダーフレアのせいなのか、元々5ナンバーを売りにしていたはずのフリードが、このクロスターでは3ナンバー車となっている。もっとも昔のように3ナンバーだから税金が高いということはなく、クロスターの場合は排気量が1.5リットル以下なので5ナンバーのエアと変わらない。 内装は、ダブルフォールディングタイプの2列目を倒してラゲッジスペースのフロアとほぼ一体化して、言わばベッド仕様に出来るほか、2重底となったラゲッジスペースは超低床仕様で、福祉車両として車いすを載せられるスペースに転換できる。しかもこの福祉車両は単に介護用にとどまらず、「スロープ」という別名を持ち、アウトドア車両としても応用が利く設計になっている。 とまあ、単に2列5人乗りにとどまらず、マルチな可能性を秘めたユーティリティーの高い