アール総合法律事務所の弁護士・社会福祉士の榊原尚之と申します。
愛知県弁護士会所属 主に知多半島エリアでリーガルサービスを提供しています。
今回は、会社が破産したら、従業員の給料や退職金はどうなるのか? についてお話を致します。参考になれば幸いです。
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自己破産で自動車やバイクはどうなるのか
自己破産を考えている方は、自分名義の自動車やバイクを所有する場合、自己破産をすると自動車やバイクが取り上げられてしまうのでは?という点が気になるところだと思います。
通勤、通院などといった必要不可欠な事情で車を所有している人にとっては、自己破産することで、裁判所から、車やバイクを取り上げられてしまっては、
「生活が成り立たなくなる。それなら、自己破産は止めておこう」
このように考える人がいるかもしれません。
自己破産をする際に、自動車やバイクがある場合には、基本的に裁判所から取り上げられ、換価後、売却された代金が債権者に分配されることになります。
しかし、例外があります。
例外的に資産価値の無いような中古自動車や中古バイクは換価する必要性に乏しく、取り上げられないこともあります。
なお、自動車やバイクをローンで購入し、そのローンが残っている場合は、裁判所ではなく、ローン会社などが自分の所有権を主張して自動車やバイクを引き上げて、業者の方で売却することになります。
今回は、自己破産の申立てをする場合、残ローンがない自動車やバイクについて、気になるところ、注意すべきところを説明したいと思います。
1.自動車やバイクは全て資産となる
自動車やバイクがある場合には、それがどんなに古い中古車であっても財産となります。なので、自己破産申立書の財産目録に財産として記載する必要があります。
財産目録に記載しなければならない自動車・バイクには制限はありません。ですから、50ccの原付であっても、全て財産として記載する必要があります。
自己破産の手続においては、自己破産の申立人の全ての財産について、裁判所から取り上げられ、それを換価し、その売却代金が債権者に分配されるということが、基本的な取扱いになります。
ただし、全ての財産が取り上げられると、破産者の経済的更生の妨げとなってしまいます。そこで、一定の財産については取り上げることなく、自己破産後も自由に所有してもよいということになっています。
この点については、自動車やバイクについても同様です。
多くの裁判所では、評価額が20万円を超えないようなものについては、裁判所は換価を求めず、破産者の所有を認める取り扱いをしています。
財産目録には、全ての財産を記載しなければなりません。しかし、実際に裁判所から取り上げられ、その換価を求められるのは、評価額が20万円を超える場合になります。
2.自動車やバイクの時価額の評価について
自動車やバイクを所有している人が自己破産する場合には、基本的にその自動車やバイクの査定書を取得して裁判所に提出しなければなりません。
ただし、査定書が必要なのは一定の場合に限られています。全ての自動車やバイクについて査定書が必要となるというわけではありません。
例えば、名古屋地方裁判所の場合には、以下の運用がなされています。
・推定新車価格(メーカー発表の車両本体価格)が300万円以下の国産車(軽自動車を含む)のうち、初年度登録後7年を経過しているときは、原則として無価値とみなすことができます。
・外国車については、すべて、評価額の調査が必要である。
・50ccを超えるオートバイは、購入後3年以上経過したものについては、原則として無価値とみなすことができる。
・50cc以下のオートバイは、原則として無価値とみなすことができる。
・ただし、中古車市場の動向等に照らして、無価値と判断することが相当でない場合は、査定書等の価格を示す資料の提出を受けた上で判断する。
そのため、推定新車価格が300万円以下の国産車(軽自動車を含む)のうち、初年度登録から7年以上経過した車を所有しているときは、基本的に無価値とみなされ、査定書の添付が必要ありません。しかし、所有する車が外国車の場合は、たとえ初年度登録から7年を経過したものであっても査定書の添付が必要となります。
また、オートバイについても、上記の基準のとおりです。
以上、無価値とみなされたり、査定しても20万円以下であったのであれば、基本的に車やオートバイを取り上げられることはありません。
査定書が必要な場合には、必ず2箇所の中古車販売店などで査定して作成してもらう必要があります。
査定書が2通求められるのはどうしてか。
1か所だけだと隔たった価格が査定される恐れがあります。そこで、多くの裁判所では別々のお店で査定してもらって、査定書を2通添付することを求めてきます。
最近多い対応ですが、査定書を書いてくれないような販売店もあります。そのような場合は、査定してくれた店員の名刺をもらい、その名刺の裏に査定額を書いてもらったりしてください。この名刺を査定書代わりに添付して裁判所に提出します。
3.財産目録の記載方法
自動車やバイクの「年式」の記載方法
「年式」の項目には、初年度登録日を記載します。
初年度登録日は車検証等に記載されていますので、確認して記入します。
なお、400cc未満のオートバイ(250CC以下のオートバイ)は車検証がありません。なので、この場合には、車台番号や登録番号から年式を調べて記載するしかありません。
自己破産する人が自動車やバイクを所有している場合は、その所有する自動車やバイクの車検証をコピーして自己破産の申立書に添付しなければなりません。
ただし、400cc未満のオートバイについては車検が必要ないことから車検証が存在しませんので、自賠責保険を受けた際の登録証などをコピーして添付します。
財産目録の「自動車・オートバイ」の欄の「評価額」の記載方法
財産目録の「自動車・オートバイ」の欄には、「実際額」を記載する項目が設けられています。
「実際額」の欄には、自己破産申立時点での自動車・バイクの査定額を記載します。
財産目録の「自動車・オートバイ」の欄の「実際額」の項目には、2通の査定書のうち価格の低い方の金額を書いておきます。
なお、カーセンサーなどのネットや広告で同じような車を見つけて、その販売価格を書くのは基本的にNGです。
4.自動車保険について
自動車やバイクを持っている場合は、通常、事故に備えて、任意保険に加入していると思います。
なので、財産目録の「保険」の欄に任意保険を記載しなければなりません。
自動車保険は解約しても解約返戻金が戻ってくることはないのが通常です。しかし、自己破産の手続においては、自動車保険は資産とみなされますので、財産目録に記載する必要があります。
資産価値の低い自動車やバイクを持っている人は、自己破産の後もその自動車やバイクに乗り続けることになろうかと思います。
このような場合に注意してもらいたいのが、必ず任意保険に入っておくことです。
仮に自己破産の手続きの途中で人身事故を起こし、多額の賠償請求を受けてしまうと、負債の総額が増えてしまいます。そうなると、他の債権者の配当がなくなるなど自己破産の債権者に不測の損害が生じてしまう可能性があります。
また、破産管財人が選任された状態で任意保険のない自動車などで事故を起こされると、破産管財人が負債を増大させたことの責めを受けてしまいます。なので、そのような事態を防ぐためにも、必ず任意保険には入っておかなければなりません。任意保険に入っておかずに自己破産の申立をすると、破産管財人から任意保険に加入するよう指導を受けることもあります。
5.自動車やバイクはいつまで利用できるのか
車やバイクについて、裁判所から取り上げられる場合、換価されるまでその車やバイクに乗っても良いのか。
車やバイクは裁判所から取り上げられるまで、使用することはできないと考えてください。
裁判所に取り上げられるような資産価値のあるものについては、債権者に分配されるべき「債権者の財産」ということになります。なので、もし事故でも起こして車両を損傷させてしまっては、債権者の財産の価値を不当に棄損したということになります。このことが自己破産の手続きで問題にされることになりかねません。
そのため、たとえ裁判所に取り上げられる前であっても、すでに自分の財産ではないと言うこともできますから、一切使用しないようにすべきだと思います。
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